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私のことはどうでもいいので、私の好きなものの話をします

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中島みゆき「縁会 2012~3 劇場版」を観てきた話

2015年1月25日(日)movixさいたま

13:10~「中島みゆき 縁会 2012~3 劇場版」

 

中島みゆきさんのライブ映画第5弾が「縁会 2012~3」だと知り、相当前から楽しみにしていた。本作品の収録元となっているのは、2013年1月18日(金)・19日(土)、ともに東京国際フォーラムでの公演からの抜粋である。「縁会」自体は2012年10月から2013年5月まで全国13会場で29公演行われ、東京国際フォーラムについては映画抜粋となった日程以外にも2012年11月に3日間組まれていたため「どこが抜かれるのか」と思っていたが、たまたま自分が足を運んだ公演(2013年1月18日)が上映される点でも膨らむ期待に拍車がかかっていた。

 

空と君のあいだに

あした

最後の女神

化粧

過ぎゆく夏

愛だけを残せ

風の笛

常夜灯

悲しいことはいつもある

地上の星

NIGHT WING

泣きたい夜に

時代

倒木の敗者復活戦

世情

月はそこにいる

恩知らず

パラダイス・カフェ

ヘッドライト・テールライト

 

今回の劇場版は、27年ぶりに「世情」がコンサートで演奏されたという点がおそらく最たるPR文句なのだが*1「空と君とのあいだに」「地上の星」「時代」「ヘッドライト・テールライト」あたりの鉄板は押さえられているので、正直「マッサンで好きになった」「紅白歌合戦で観てちょっと気になってる」とかでもいいから、少しでも中島さんが好きだとか、興味があるとか、そういう方にはぜひ見て頂きたい(むしろ、押しつけがましくゴリゴリと押し付けたい)作品ですと太鼓判を押したいし、個人的には若手歌手の皆さんには教則映像として観てもらったほうが良いんじゃないかと余計なお世話までも頭をめぐる次第である。

まず、御歳62歳にして驚くほど姿勢が良く(若い人より遥かに良いくらいです)、あれだけきちんと伸ばした背筋の賜か、まさに「腹から声を出している」こと。声量にも音程にも衰えや狂いが感じられず、勇ましい。あまりにもシンプルに「そうだよ、これが歌手じゃん。」と当たり前のことを認識させられる。

二つ目に、実際のライブは(東京国際フォーラムの)2階席からの参加であったがゆえ細かな表情までは確認できなかったのだが、劇場版でその豊かな喜怒哀楽を拝見してみると、役者なのではと思ってしまうほどの表現力と気迫、説得力があり、収録映像でありながらグイグイ引き込まれてしまう。

少し遡ると、2014年11月、NHK「SONGS」第318回にて『中島みゆきテーマ曲の世界』が放送された。


SONGS | これまでの放送 | 第318回 中島みゆき

(既に閲覧済みの録画映像を実家に保管しているため、今回も記憶に頼らねばならないのが苦しい限りだが、)その際、「家なき子」のタイアップ『空と君とのあいだに』を、非常に少ない資料・情報から書き上げたことを笑い話のように本人が語っていた。

楽曲については、自らの経験を投影するもの、作品として物語を作るもの、どちらともいえないものなど様々なのだろうが、現在放送中の連続テレビ小説「マッサン」主題歌『麦の唄』だとか、今挙げた『空と君とのあいだに』は中島さんの実体験というよりも、“中島みゆき色”をゆがめることなく納品先となるタイアップ作品の世界観に寄り添ったものと解釈している。しかも中島さんの場合、このパターンで当たった曲が一発のみならず、今までに何発当ててきたことだろうか。歌がなんであろうとヒットする運命にある作品を引き当て続けることは普通に考えて困難だろう。そこには、どんな時代にも作品と相乗で訴求できる、中島さんの手腕があったからだとしっかり書きとめておきたい。

さて、これに対して、コンサート中、歌詞そのもののように涙を浮かべたり、自分をあざ笑ってみたり、すごんでみたり、睨みつけたかと思えば少女のようにうつむく姿など、これらは中島さんが自身の人生を投影しているものなのだろうかと気になってしまうほどの役者ぶりなのだ。

中島さんは、「日本において70年代、80年代、90年代、00年代と、4世代でチャート1位に輝いた唯一の女性アーティスト」*2ということで、先程謳った「27年ぶりにコンサートで演奏された『世情』」の前回披露時に産まれていない私にとって、中島さんのキャリアと作品数からすべてを網羅するにはまだまだ長い道のりがあり、こうしてコンサートに足を運び、感銘を受けた曲を後から調べ、「この曲はこの年代にリリースされ、このアルバムに入っているのだな」といった形式で楽曲を拾うこともままある。

劇場版の元となった「縁会」コンサートにて、私は不勉強ゆえ4曲目の『化粧』を初めて聴いた。この公演内で、一目惚れならぬ一聴惚れしてしまった1曲である。

初出はアルバム『愛していると云ってくれ』(1978年4月)ということで、先程不勉強と述べたが生前であるため多少お許し願いたいところではある。

この曲、中島さんの技法なのか、感情移入してそうなってしまっているのか、かなり弱々しく歌う箇所と力強く訴えるような歌唱の緩急が特徴的なのだが、前述のしっかり整った姿勢に支えられているのか、弱々しい表現をしようとも元々の芯が通っているので全く不安定でないのだ。「バカだね バカだね バカだね あたし」と自分への呆れた気持ちを嘆くように歌う中島さんを見つめながら、還暦を過ぎても尚、おひとりで自由に、いつも陽気に振る舞う中島さんにも人知れぬ青春があったのだろうとシンパシーを抱いてしまう。

また、実際のコンサート中の中島さんはなかなかお茶目かつよく喋るのだが、劇場版においては最後の挨拶以外のトークは封印され、曲転換を挟んでひたすらコンサートを堪能できる構成になっていた。ラジオ(後述)さながらのハガキ紹介、親交のある工藤静香さんの話、紅白歌合戦初出場時の「地上の星」自虐*3等々、会場ではいつもの明るさでお話されていたと記憶している。前述した気迫と、トーク中に拍子抜けしてしまう“一人称・中島喋り”の緩急も良いが、これ(劇場版)はこれで中島さんの音楽の世界だけにひたすら浸ることができる。

ちなみに、(冒頭と重複するが)エンドロールで「2013年1月18日(金)・19日(土)」からの抜粋であることが記されていたので、各曲、両日のうち良かったほうのテイクを採用したということなのだろうか。

「毎日いろいろある中で、お時間を作って頂きありがとうございます。短い時間で皆様に楽しんでいただこうと思いましたが、楽しませてもらったのは私のほうでした。」と深々と頭を下げ、『ヘッドライト・テールライト』を歌い上げたところで公演は幕を閉じる。

学生時代、たまたま「金八先生 第二シリーズ」を全話観る機会があり、名曲「世情」を世に広く知らしめることとなるシーンも勿論拝見した。世代の問題か思想の問題か、ドラマ自体は私の思うところと相容れないものであったが、しかし私もまた、「世情」で中島みゆきさんの音楽に足を踏み入れた多くのリスナーの一人だ。ただ結果的には、「世情」はあくまでもきっかけであって、その後「瞬きもせず」(1998年)という名曲(もう中島みゆきさんの曲にはすべて「名曲」と肩書を付けたい)に出逢い、それ以来虜になってしまった。

これは余談だが、今まで一度たりとも本ブログでフォーカスしないまま「最も敬愛している」と再三述べているのがエレファントカシマシだが、別の場所でひっそりとしたためているTwitterにて、私はかねてから「エレファントカシマシに一番対バンしてほしいのは中島みゆき(さん)」の旨を記してきた。ここで実現可能性について議論したい訳ではない。

互いにどう思っているのかは分からないし、“対バン”と書いてはみたものの、中島さんは個人名義で活動されている。ただ、もし両者を好きこのんで聴いている方がいらしたら、エレカシと中島さんに感じる、相通ずる、でも形容できない何かをお分かりいただけるのではないだろうか。力強くて、でもちょっとずれていて、決して器用でなく、製作だろうが公演だろうが、音楽のフィールドで圧倒的な才能と魅力を発揮するところと、あと、あと。

現在、中島みゆきさんはAMラジオ「ニッポン放送」にて『オールナイトニッポン月イチ』を担当している。ざっくりご説明すると、今のオールナイトニッポンには『GOLD』枠(22時~24時)、最も広く知られている通称『一部』(25時~27時)、通称『二部』(27時~29時、つまりもう朝の5時にあたる)があり、深夜ラジオ界の花形は『一部』だ。

中島さんが担当しているのは日曜深夜から月曜朝にかけての2時間となるため、ついつい土日の朝に寝すぎてしまったせいでちっとも眠りに就けぬ夜などにラジオをつけてみると、いつもの中島さんに出くわすことがある。(ちなみに、中島さんが登場しない週は普通に放送休止時間となっている。)

これだけの大御所でありながら、月に1回、あの時間帯に生放送。重複するが、決して局のメイン時間ではない。だけど中島さんは、あの感じで飄々と話し、笑っている。

私自身は、中島さんが3回ほど年女を迎えたあたりで生まれた世代に当たるが、こうして大人になり、彼女が生前にリリースした作品にも感銘を受けている。

中島さんは、そのくらいかっこよくて、チャーミングで、偉大なミュージシャンだと思っている。

1975年に「アザミ嬢のララバイ」でデビューした中島さんの音楽活動は、ちょうど今年で40年を迎える。”あと40年”とお願いするのはわがままなのかもしれないが、出来るだけ長く中島さんの音楽活動を追いかけていようと思う。

エレカシとのエンカウントも、あれば良いなと思いつつ。)

参考:

中島みゆきのオールナイトニッポン月イチ|AMラジオ 1242 ニッポン放送

中島みゆき「縁会2012〜3 劇場版」|ローチケ.com|チケット情報・販売

*1:実際に、冒頭のコーラス『シュプレヒコールの波~』で割れんばかりの拍手が起こる模様が収められている。

*2:これめちゃくちゃすごいことだと思うんだけど、なんでもっと大々的に崇められてないの!?

*3:この時点ではもちろん「『麦の唄』での紅白歌合戦出場」は未来の話なので観客もつゆ知らず。